「飛蚊症について」
大島眼科 大島 隆志
相談:目の前にゴミのような、変なものがゆらゆらと飛んで見えることがあり
ます。このまま放置しておいて良いものでしょうか。
Q1:相談者のような症状は、医学的には何と呼ぶのでしょうか。
A1:このような症状を、「飛蚊症」と呼びます。「ひぶんしょう」の「ひ」
は飛行機の飛、「ぶん」は虫の蚊、「しょう」は症状の症と漢字で書きます。
Q2:もう少し詳しく症状について説明していただけますか。
A2:明るい所や白い壁、青空などを見つめたときに、目の前に虫や糸くずな
どの浮遊物が飛んでいるように見えることがあります。視線を動かしてみると
ゆらゆらと一緒に移動してくるように感じられたりします。また瞬きをしてみ
ても、目をこすっても消えたりしませんが、暗い所では気にならなくなります。
このような症状を医学的に「飛蚊症」と呼んでいます。
ところで、目の前を飛ぶ浮遊物の形はいろいろありまて、先程にも出ました
虫状のもの、糸くず状のものをはじめ、ゴマ状のものや、カエルの卵状のもの、
さらにはタバコの煙をフッと吐いたときにできるリング状のものなど、実に様
々です。
Q3:目の前を飛ぶ浮遊物の正体は一体なんなのでしょうか。
A3:その説明をする前に、予備知識として、眼球の構造を是非知って頂かな
いといけません。
さて、話しを目の前を飛ぶ浮遊物の正体に戻しましょう。実はその正体はご
自身の目の中にあったものなのです。先程述べたように、眼球の中の大部分は
硝子体と呼ばれる透明な物質が詰まっています。角膜と水晶体とを通って外部
から入ってきた光は、この硝子体を通過して網膜まで達します。そのため、こ
の硝子体に何らかの原因で「濁り」が生じると、明るい所を見た時にその濁り
の影が網膜にうつり、眼球の動きとともにゆらゆらと揺れ動き、あたかも虫や
糸くずなどの浮遊物が飛んでいるように見え、「飛蚊症」として自覚されると
いうわけです。
Q4:なるほど、「飛蚊症」がどうしておこるのかは大体分かりました。ただ
し、何らかの原因で生じた硝子体の濁りが云々となると、いまひとつ良く分か
りません。一体何故、どのような原因で硝子体の濁りが生じるのでしょうか。
A4:実は、硝子体に濁りが生じる原因は、大きく分けて二つあります。一つ
は生理的な原因によるもの、すなわち正常な目でも起こるものです。もう一つ
は、明らかに病的原因があるものです。
Q5:今回の相談者の場合は、一体どちらの原因なのでしょうか。
A5:これは少々判断が難しいところです。「飛蚊症」に気がついたのが最近
なのか、或いは結構前からなのか、また見えている浮遊物の数や大きさはどう
なのかといった事が、今回の相談内容からははっきりしません。
一般的に述べますと、「飛蚊症」に気がついたのが結構前からで、見えてい
る浮遊物の数がそれ程多くはなく、またその大きさもそれ程大きくはなく、さ
らに浮遊物の数や大きさに大した変化がないという場合は、生理的な原因によ
るもの、すなわち正常な目でも起こるものと考えて良いでしょう。このタイプ
のものであれば、通常放置しておいても構いません。ただし、例外も無論あり
ますので、ご自身で勝手に判断される事は禁物です。「飛蚊症」に気がついた
のならば、やはりしっかりと眼科で検査を受けて頂く事をお勧めします。
Q6:検査の重要性は分かりましたが、眼科の検査というと、視力検査の他は
すぐには思い浮かびません。「飛蚊症」の検査となると一体どのような事をす
るのでしょうか。まさか、痛い検査ではありませんよね。
A6:ご安心下さい。少々光がまぶしい検査ですが、特別痛みを覚える検査で
はありません。
Q7:今回の相談者は、中高年の方なのですが、年齢的なものと関係はあるの
でしょうか。
A7:高齢者の「飛蚊症」は、たいていは目の老化現象から生じるものです。
Q8:最後に、「飛蚊症」を引き起こす病的原因について、簡単で結構ですか
ら教えて頂けないでしょうか。
A8:網膜裂孔、網膜剥離、硝子体出血、ぶどう膜炎について話す。