「女性の病気と漢方治療」

五戸総合病院 井戸川 敏彦


女性のからだは女性ホルモンの影響で種々の不定愁訴を起こしやすい。西洋医
学では治療しにくい「不定愁訴」に著効を示すことが漢方治療の大きな特徴で
ある。今回は女性に多い諸疾患とそれに使用される代表的な漢方薬を紹介する。

月経随伴症状(月経前緊張症、月経困難症、月経不順、過多月経など)には、
虚証タイプに当帰芍薬散、虚実中間タイプに加味逍遥散、桂枝茯苓丸、実証タ
イプに桃核承気湯がよく使われる。

更年期障害には加味逍遥散、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、女神散などがよく使わ
れる。

膀胱炎には猪苓湯、五淋散、清心蓮子飲がよく使われる。

冷え症には当帰皿逆加呉茱生姜湯、当帰芍薬散、五積散、桂枝茯苓丸がよく使
われる。
にきび、吹き出物には清上防風湯、桂枝茯苓丸、当帰芍薬散がよく使われる。

原因となる病気がない体の痛みには、冷えと頭痛に呉茱萸湯、腰痛に八味地黄
丸、冷えと肩こりに当帰芍薬散、緊張性の頭痛や肩こりに葛根湯、冷えと関節
痛には桂枝加木附湯などがよく使われる。

漢方治療は西洋医学と補い合って健康を守る医療行為である。安性だから、簡
単だからということだけで自己判断で安易に漢方薬に頼るべきではない。服用
を希望する場合は主治医に相談していただきたいし、漢方薬を服用し始めた後
も、回復と共に「証」が変化したり副作用に注意する必要があるので、定期的
な診断を受けることが大切である。


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