「小児の肥満について」

巴小児クリニック 巴  朝夫


Q1:本日のテーマは小児の肥満ということですが、何故、今小児の肥満が問
題となっているのでしょうか。

A1:それは、以前、成人病といわれ現在は生活習慣病といわれる糖尿病や脳
卒中、心臓疾患の原因となる高脂血症、高血圧症の大敵が肥満であり、以前は
大人の問題と言われた肥満が現在では子供にも多くなってきているという事で
す。

Q2:では何故現在の子供には肥満が増えているのでしょう。
   その前に肥満の判定はどうしているのですか。 

A2:肥満は体重の多い、少ないで判定しているのではありません。体脂肪率、
即ち骨、筋肉、脂肪などの体重を構成している物の中で脂肪が何%占めている
かが問題となります。ボディビルダーのように体重が有っても筋肉質で体脂肪
率の低い人は肥満ではありませんし、体重が多くなくても筋肉の少ない人は体
脂肪率が高く、痩せ肥満と言われます。

Q3:その体脂肪率高い、肥満の子供が増えているのは何故でしょう。

A3:それは単純に過剰な栄養摂取と運動不足、即ち摂取エネルギーが多く消
費エネルギーが少ない環境に子供達が置かれているということです。ゲーム、
ファミコンなど室内で体を動かさず、美味しい食事、美味しいおやつを食べて
いる子供が多いため肥満となっています。歩く機会が減った車社会、豊かな食
生活など現在の子供を囲む環境の問題だと思います。

Q4:環境の問題であると言われましたが、具体的にはどの様な事でしょうか。

A4:我々、八戸市医師会が平成元年に行った八戸市の学童肥満児のアンケー
ト調査によると肥満の始まっている年齢は、一番多いのが2から4才の幼児期
で次が小学校4年生でした。幼児期に肥満が始まっている子供達の特徴は、甘
いおやつを食べ過ぎていることで、小学校4年生の特徴は運動が少ない事です。
4年生になると部活が始まりますが、運動が苦手な子は帰宅部と称して家に帰
りファミコンをしている場合が多いのです。

Q5:それでは肥満を作らない対策としては何に注意したらよいのでしょう。

A5:まず強調しておきたいのは、子供は自分で肥満になりたくてなっている
のではないということです。肥満に関しての遺伝的要因は30%で、70%が
環境要因です。環境要因、ことに家族の食生活の影響が大きく影響しますので
おじいさん、おばあさんを含めた家族の協力が大事です。

 1才までの乳児期には、体重に関してはあまり気にしなくて良いと思います。
体重などを気にすると育児ノイローゼになりますので。幼児期に注意するのは
おやつを食べ過ぎないようにするということです。おやつは糖分が多いのでお
やつの量が多いとどうしても食事がきちんと食べれなくなり栄養のバランスが
くずれ、肥満の原因となります。しかし、おやつを禁止することは子供の心理
的発達に悪影響を与えますので、小学校4年生ごろまではおやつは禁止すべき
でないと思います。ただし、与えるおやつの内容と量をコントロールしてもら
いたいと思います。3食、それも日本食を中心にした食事をとるように心がけ
て欲しいと思います。子供はどうしても甘くて、柔らかく、食べ易い洋食を好
みますので噛みごたえにある日本食を食べるようにしてください。

Q6:次にもし子供が肥満になったらその解消法はどうしたらよいのでしょう。

A6:まず子供の肥満の解消は大人と異なるということです。子供はまだ発育
過程にあり、身長が伸びます。無理に減量しなくても身長が伸びれば自然に肥
満は解消します。この身長の伸びは男女で異なります。男子は中学で身長が急
速に伸び、男性ホルモンの分泌も盛んになり筋肉質な体型になります。男子で
は小学高学年が最もふっくらする時期ですので、この段階で無理に解消しよう
としなくても、少なくても現状維持を心がけて行けば、中学になり肥満は解消
します。女子では小学高学年に成長のピークがありますので、この時期に肥満
の解消に努力して欲しいと思います。中学になると女性ホルモンの作用でふっ
くらした体型になりますので。

 食事に関しては大人も子供も同じと思います。日本食を中心とした、繊維の
多い食べ物を食べるべきと思います。何を食べれば太り易いかは特別な栄養学
的知識がなくても分かるはずだと思います。糖分と動物性の脂肪をとり過ぎな
ければよいのです。

 運動に関しては有酸素運動、ということは楽に呼吸が出来る軽めの運動が肥
満の解消に有効です。有酸素運動では脂肪、特に健康に悪影響を及ぼす内臓に
蓄積された脂肪がエネルギーとして使われます。100m競争のような激しい
運動は無酸素運動といってこの時に使われるエネルギーは肝臓に蓄積されたグ
リコーゲンで肥満の解消にはなりません。無理せず楽な運動を持続的に行うこ
とが大事です。もう一つ強調しておきたいのは筋肉をつけることです。筋肉は
最もエネルギーを消費する組織で、筋肉がつけば寝ている間にもエネルギーは
消費されます。結局、肥満の解消とは脂肪を筋肉に変える事だと考えて貰えば
良いと思います。

 体重を減らすのではなく、余分に蓄えられた脂肪を筋肉に置き換える。そう
考えて貰えば大人の肥満も、子供の肥満も解消できると思います。それも焦ら
ずにやることだと思います。


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