「かいせん」

青森労災病院 亀田 忠孝


疥癬はヒゼンダニによる一種の皮膚感染症である。
感染経路は大きく分けて3通りある。
(1) 性行為によるもの
(2) 寮などの集団生活で寝具などを共用するために起こるもの
(3) 老人養護施設などで医療従事者を介して起こるもの

ヒゼンダニは人間の皮膚以外では増殖しないが、皮膚を離れても数日間は生き
るので、寝具等を介して、身近に生活する人に感染することがある。
疥癬皮膚症状は、全身性の湿疹に似ており、非常にかゆく、小児ではアトピー
性皮膚炎、老人では皮脂欠乏性皮膚炎と誤診されやすい。
診断は指間などをよくみて、疥癬トンネルをさがし、虫体を証明することによ
る。

老人医療施設などで集団発生する場合、体の弱ったお年寄りなどで発生する疥
癬の重症化したノルウエー疥癬を感染源としていることが多い。寝たきり老人
は生活の多くの面を介護者に依存しているので、その過程で介護者を介しで集
団発生する。集団発生の場合は、ノルウエー疥癬患者をみつけて個室に隔離す
ること。感染及び感染の可能性の範囲の者は症状の有無にかかわらず、介護者
からその家族まで一斉に治療する必要がある。

治療は、γ-BHCオイラックス軟膏、安息香酸べンジル等の外用剤を用いるが、
原則として、患部だけではなく、首から下の全身にぬる。
感染後1ケ月間は無症状の時期があるので、家族の一人に疥癬の診断がついた
場合は、家族全員の治療が必要である。
疥癬のすべてが典型的なものばかりではなく、ステロイド軟膏の外用により通
常みられないような症状を呈することがあり、注意深い観察と繰り返しの検査
が大切である。


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