「胃・十二指腸潰瘍」

鈴木内科医院 鈴木竹一


この病気は日本人の1%前後にみられるほど非常に罹患率が高い。男は
女の3倍多い。

 その原因としては、攻撃因子と防禦因子のバランスが崩れ、粘膜から
分泌される塩酸やペプシンにより、自己の壁を消化するために起こると
されている。しかし、最近は、ことに十二指腸潰瘍に於てヘリコバクタ
ー・ピロリという細菌により発症する、という説が相次いで支持されて
きた。

 典型的な症状としては、空腹時に心窩部の焼けるような痛みがあり、
食べると治る。

 合併症としては、?出血(約10%)?穿孔 ?幽門狭窄などが主な
るものである。予後としては再発が多く、年間10%〜20%、10年
後は50〜60%に達する。通常の薬物療法による再発率 に差はない
が、ヘリコバクターの除菌療法は再発率が低いという成績がある。

 診断は、上部消化管のX線二重造影と内視鏡検査によるが、緊急時に
限らず、後者の方法が主流となっている。癌との鑑別に有効である。ヘ
リコバクターに対しては生検材料の塗抹、培養、呼気の炭酸ガス測定な
どを行う。

 薬物療法には?攻撃因子の抑制が主流である。H2受容体拮抗剤で80
〜85%治癒し、プロトンポンプ阻害剤で90%以上治癒する?防禦因
子増強剤単独の治癒率は60%前後だが、攻撃因子抑制剤と併用するこ
とが多い。殊に老人では多用している?ヘリコバクターには抗生剤を併
用する?などがある。

 外科療法は、主に合併症のとれないものが対象となる。

 今問題となっているのは?診断・治療の標準化である。ガイドライン
が発表されている?ヘリコバクター除菌療法の保険適応の時期は本年末
か明年始めの見通しである?遺伝子解析による胃・十二指腸潰瘍ハイリ
スクグループの発見、予防・再発の防止がある。


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