「頭を打ったときに注意すること」
八戸赤十字病院 日高 徹雄
《市内の主婦からの質問》
先日、3才の娘がふざけて椅子から落ち、頭を強く打ちました。最初驚いたの
か泣きもせず、逆に心配になってしまいました。結局、こぶが出来た程度でし
たが、頭ということで気になります。このような場合はどのようにすればよい
のでしょうか?
さて、頭を打撲したときに必要以上に心配される方がいらっしゃる反面、重篤
な脳のダメ−ジが進行してから受診されるケ−スもあります。このどちらの例
も良くない受診の例です。
それではどの様なことに注意し、どの様な時にはお医者様に診察していただく
かをお話します。それは頭を打った衝撃が脳にたいしてどのようなダメ−ジを
与えたかを知ることが大切です。
1)強い衝撃が脳に伝わると脳の働きが低下します。そのような場合は意識が
障害(意識がなくなる)されます。よく脳震盪とか外傷性健忘(打った時の記
憶がない)はご存じでしょう。これが意識障害です。
2)小児や乳幼児の場合には痙攣が見られることもあります。
3)それから麻痺があるとか、言葉が思うように話せない、物がふたつに見え
るなど、脳の局所(一部分)に障害が生じることもあります。
この様な症状が見られる場合には早く専門の医療機関を受診しましょう。
《年齢によっても脳のけがの状態が変わるのですか?》
乳幼児や小児の頭蓋骨は弾力性に富んでいますので直接脳に届き易く、頭蓋骨
のひずみも起こりやすく、脳も未熟なため痙攣が起こりやすい。頭蓋骨の癒合
も弱いために症状の悪化にずれが見られることがあり、乳児を含めた小児の頭
部外傷は少なくとも24時間は観察が必要です。この様なことから最初の質問
者の方の場合は心配ないと言えます。
高齢者の場合は加齢に伴う脳委縮が見られることから、頭蓋骨と脳との間に余
裕間隙が広がっています。すると打撲によって脳の揺さぶりが大きくなる結果
ゆっくりとこの間隙に出血する慢性硬膜下血腫が出来て参ります。症状が出て
来るのは約3週間前後の時期なので本人も頭を打ったことを記憶していない場
合があります。特に高齢者の場合には精神症状を伴うことが多く、周囲の方が
気をつける必要があります。
《スポ−ツに伴う頭部外傷》
とくにスノ−ボ−ダ−の外傷は頭蓋内出血を伴う頻度が多くみられ注意を要し
ます。