「うつ病について」

みかわ神経科内科 三川 博


昨年1年間の自殺者が3万人を越え、そのうち6割以上の方がうつ病による自
殺ではないかと言われているし、他方、一般科を受診する患者の1割はうつ病
とも言われ、まさに現代はうつ病の時代だと言っても、過言ではない。

うつ病は、自殺の危険が大、社会的に責任のある立場の人が罹りやすい、身体
症状が前景にたち、身体疾患と誤解されやすいなどの特徴がある。うつ病に対
する理解を深め、早期発見、早期治療を心掛けることで、ぜひとも、この病気
を克服して行きたいものである。

うつ病は精神疾患であるものの、必ずといっていいほど身体症状も随伴する。
従って、症状は、憂うつで意欲が湧かない、眠れない、自信がないなどの精神
症状と共に、食欲不振、頭痛、倦怠、胸苦しさなどの身体症状にも注意し、仮
に身体症状が主であっても、いつもより元気がなく落ち込んでいる面があった
なら、うつ病を疑って、神経科・精神科の門をくぐることを勧めたい。

うつ病発症の二大要因は、まじめ、几帳面で責任感の性格と過大なストレスと
いうことができる。年代的には、40代から60代の、社会や家族の中心とし
て活躍している中年層が多い。阪神大震災の事後処理に奔走していた、神戸市
の助役が自殺したという例もあり、こうした有能な人材を病気で失うことは、
親族の悲しみに止まらず、社会の損失でもある。

うつ病の治療は、専門医による薬物治療法やカウンセリングが中心となるが、
家族の理解や協力も重要である。患者は、孤立感や、無力感のどん底にあり、
次々と沸き起こる心配事に終日苦しんでいる。こうした心の痛みを理解し、受
け止め、安心して休息、療養できる場を家庭に作ってあげることが重要である。

うつ病は霧が晴れる、スッキリ良くなることが多い病気である。早めに専門医
を受診し、うつ病を克服してもらいたい。


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