「高血圧の漢方療法について」

類家内科クリニック 及川広則


この患者さんの場合ですと、頭痛の他にどのような生じようがあるか、体力体
質てきなもので異なってきますが、午前中に頭具合が悪いような高血圧の方に
は、釣藤散が考えられます。もう少し体力の無い方で頭痛、肩凝り、のぼせな
どがあれば、七物降下湯が考えられます。これにも釣藤が入っています。

 逆にガツチリタイプで固太りの方で、便秘やイライラがある方には大紫胡湯
が考えられます。この薬は糖尿病や脂肪肝のある方にも適応になります。

 太鼓腹で目が充血するような方には防風通聖散が考えられます。これは痩せ
薬としても利用されています。顔が赤くてのぼせぎみで頭痛があれば黄連解毒
湯が考えられます。ラットでは脳出血の予防が証明されています。のぼせぎみ
で便秘やイライラがあれば三黄寫心湯も考えられます。鼻血のときにも使えま
す。

比較的体力があっても、やや神経質な方で動悸や不眠があれば紫胡加竜骨牡蛎
湯が考えられます。この薬は牡蛎の殻や恐竜の化石が入ったものでカルシウム
を多く含んでおります。カルシウム不足が若者のイライラを引き起こすともい
われております。カルシウムを多くとることで血圧が下がることも知られてお
ります。

 以上の薬は男女の区別なく使えますが、特に女性に使う事の多い薬としては、
大黄牡丹皮湯や桃核承気湯があります。これはいずれもお血という悪い血が体
の中の気の流れを悪くして、のぼせや下半身の冷え、イライラ頭痛などを引き
起こしているのを治してあげる薬です。

 これらの薬の他にも色々な薬があります。

 漢方薬は体質改善薬といいますか、体全体の気、血、水のバランスが乱れて
色々な症状や病気になりますので、その乱れたバランスを治してあげる事が治
療なわけです。例えば苓桂じゅつ甘湯という薬があります。これは、やせた胃
下垂タイプの方でめまい立ち眩み動悸のぼせのある低血圧の方に使う薬ですが、
高血圧の方にも使います。

漢方の考え方では、水毒が気を上げて動悸やめまいを起こしていると考えるわ
けです。胃の停水をとって上にあげることで症状が改善することを治療の目的
としますので、胃のなかに胃液がチャポチャポしているような胃下垂タイプの
方には、低血圧であっても高血圧であっても使うわけです。高血圧の治療を漢
方薬で行うのは、もちろん可能ですが、他に狭心症などが合併している場合に
は西洋薬の併用も必要ですので、まずかかりつけの先生に相談してみてはいか
がでしようか


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